オーストラリアの再生医療ベンチャーCynata社と独占ライセンス契約を締結

2019.10.31

再生医療ニュース解説

骨髄移植後に発症する重篤な合併症の治療を目指し、iPS細胞を用いた再生医療製品を開発

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、本日、オーストラリアの再生医療ベンチャーCynata Therapeutics Limited (社長:Ross Macdonald、以下Cynata社)と、同社が開発中の再生医療製品(「CYP-001」)の開発・製造・販売に関する独占ライセンス契約を締結しました。「CYP-001」は、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞(*1)を用いた再生医療製品で、Cynata社が骨髄移植後に発症する合併症「移植片対宿主病(GvHD)」(*2)を対象に企業治験を進めているものです。

当社は、GvHDを対象とした、「CYP-001」の全世界における独占的な開発・製造・販売権をCynata社より取得し、まずは日本で企業治験を2020年中に開始する計画です。

◆詳細はWEbページをご覧ください。

⇒ https://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1470.html?link=atp

再生医療は、アンメットメディカルニーズへの新たな解決策として注目されています。その中でも分化万能性と無限増殖性を持つiPS細胞による治療は、多様な細胞を大量に作製できることから、実用化への期待が高まっています。

GvHDは、白血病などの治療で骨髄移植を行った後に発症する重篤な合併症で、移植された骨髄由来のリンパ球などの免疫細胞が免疫応答により患者の体を異物として認識し攻撃することで、全身に炎症が起こります。通常、免疫抑制剤などで治療を行いますが、約半数で効果が見られず、最悪の場合、死に至るアンメットメディカルニーズの高い疾患です。

Cynata社は、当社子会社でiPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(フジフイルム・セルラー・ダイナミクス、以下 FCDI)が供給したiPS細胞を間葉系幹細胞に分化誘導して「CYP-001」を作製。2017年5月には、iPS細胞を用いた再生医療製品の企業治験では世界初となる「CYP-001」の臨床第1相試験を、GvHDを対象にイギリスおよびオーストラリアで開始しました。

当社は、2017年1月に、「CYP-001」の開発・製造・販売ライセンス導入などを目的にCynata社へ出資しました。今回、Cynata社が実施した臨床第1相試験において、安全性の評価項目が達成され、さらに皮膚の湿疹や消化器官の異常などGvHDの症状が改善される効果がみられたことから、「CYP-001」の開発・製造・販売権の取得を決定しました。

当社は、FCDIにて、アンメットメディカルニーズの高い加齢黄斑変性や網膜色素変性、パーキンソン病、心疾患などの領域でiPS細胞を用いた再生医療製品の研究開発を進めています。今後、FCDIのみならず、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、富士フイルム和光純薬株式会社、FUJIFILM Irvine Scientific, Inc.などグループ会社の技術・ノウハウを活用して、事業拡大を図るとともに、再生医療の早期産業化に貢献していきます。

*1 患者本人以外の人の細胞から作製したiPS細胞由来の間葉系幹細胞。間葉系幹細胞とは、生体内に存在し、一定の分化能/増殖 能を持つ幹細胞。脳梗塞の他、軟骨損傷、虚血性心不全、下肢虚血など、さまざまな疾患の治療に1000例を超える臨床研究が行われている。多様な効果が期待されていると同時に、高い安全性が実証されている。

*2 Graft versus Host Disease。移植片にとって、レシピエント(臓器受給者)の体は異物と認識される。ドナー(臓器提供者)の臓器が、免疫応答によってレシピエントの臓器を攻撃することによって起こる症状の総称。

提供:@Press